囚われのシンデレラ【完結】
「少し面倒だとは思う。でも、どんなに近距離でも細田さんを呼んで。細田さんにはちゃんと伝えてあるし、それ相応の手当ても出している。躊躇うことなく乗せてもらってくれ」
「あの、でも、どうしてですか……?」
どうして、そんなことを急に――。
「少し気になることがあって。でも、念のためにしていることで、そんなに不安になることはないんだ」
「それは、一体――」
「本当に、すまないと思ってる」
いきなり西園寺さんが頭を下げた。
「さ、西園寺さん……!?」
その姿に驚く。
「前に話した、縁談相手の家の動きが少し気になる。万が一、直接君にコンタクトを取って来たりしたら問題だ」
縁談――本当に、まだ終わっていなかったんだ。それはつまり、まだ相手の方が諦めていないということなんだろう。
「あずさには何の関係もないのに、迷惑をかけて本当にすまない」
「謝ったりしないで。顔を上げて」
頭を下げ続ける西園寺さんに、慌てふためく。
「大丈夫。ちゃんと、西園寺さんの言う通りにしますから心配しないでください。それに、困った時は持ちつ持たれつです! お互いの利益のためにって結婚したはずなのに、これまで私ばかりが助けてもらって何も返せていなかったから。これくらいのこと、どうってことありませんよ!」
そう言って笑うと、西園寺さんがようやく顔を上げてくれた。
「だから、迷惑をかけてるなんて思わないで。私たちは仮にも、夫婦、です。夫婦は運命共同体です。連帯責任です。ん……? 連帯責任……ちょっと、意味が違うかな……」
西園寺さんが、手のひらで顔を覆って笑い出す。
「やっぱり、言葉、違いますよね。バカなこと言ってるって思ってるでしょ……?」
「……いや。なんか、癒された」
その肩を震わせて、まだ笑うから。
「なら、どうしてそんなに笑うの?」
「ごめん。もう笑わない」
そう言って、手のひらがなくなって現れた西園寺さんの表情は、どこか遠くの未来を見ているみたいに遠い目だった。
「あずさのことは、何があっても守りたい。あずさの不安を消すことができるように、出来る限り早く解決させようと思っている。それまで、もう少しだけ我慢してくれ」
その目の見ていた未来は、どんなものだったのか。私には分からなかった。