囚われのシンデレラ【完結】
西園寺さんが出張中は、ただ練習に明け暮れて。気づけば木藤さんのリサイタルの日がやって来てしまった。
支度もすべて終え、控室で待機している。
あの手この手を使っても、この緊張を収めることが出来ない。
本番前って、ここまで緊張していただろうか――。
舞台で演奏するのは、音大生の時以来だ。記憶が曖昧になっている。
「大丈夫よ。いつも通り演奏してくれれば、何の問題もないからね!」
悲壮感に満ちた顔をしているのだろう。木藤さんが苦笑しながら私の肩を叩いてくれた。
「それに。今日のあずささんとっても素敵。いつもの可愛らしい雰囲気が、大人っぽい雰囲気に早変わりね。今日、西園寺さんも見に来てくれるんでしょう? 惚れ直しちゃうかもー」
「そんなことは……」
このドレス。本番で着るドレスをどうしようかと思った時、西園寺さんに買ってもらったものがあることに気付いた。
パーティーで着るはずだったドレスが、ここで活かされている。
たまたまなのかもしれないけれど、舞台での演奏用にちょうどいいドレスだった。
3着買ってもらったうちの、一番シンプルで落ち着ているデザインのものを選んだ。あくまで私は助っ人だからだ。
西園寺さんが、見ていてくれる――。
そのことを思うと、また違う緊張が生まれる。
一週間離れていたせいで、また振り出しに戻ったみたいに西園寺さんを前にするとドキドキして仕方ないのだ。
西園寺さんにがっかりされたらどうしよう……。
ああっ! ダメだダメだ。
ちゃんと、目の前の本番に集中しなければ。
与えられた責任を全うする。
木藤さんの演奏を最高のものにすること。
そのことだけを考える。