囚われのシンデレラ【完結】
木藤さんが私にくしゃくしゃの笑顔をくれた。
”あずささん、最高!”
そうやって唇で伝えてくれる。
”――それと、超エロかった”
「き、木藤さんっ!」
まだ舞台の上だというのに、思わず声を張り上げそうになってしまった。
鳴りやまない拍手に感動する。客席を見渡せば、目を輝かせて手を叩いてくれている姿がたくさんあって。自分の腕が生み出した音が、誰かの心を少しでも動かしたんだと思うとたまらなく心が震える。
そして。その中に、西園寺さんがいてくれて私を真っ直ぐに見つめてくれていた。
喜んでくれましたか――?
そう、視線で問い掛けてみる。それが届いたのか、私を見つめて頷いてくれた。それが何より私を幸せにした。
演奏会がすべて終わると、西園寺さんが控室に来てくれた。
「今日の演奏、とても良かったです。いいものを聴かせていただきました」
花束を持って現れ、それを木藤さんに渡していた。
「こちらこそ、来ていただいてありがとうございます。綺麗なお花までありがとうございます」
そう頭を下げた後、木藤さんが西園寺さんに意味深な視線を向ける。
「それはそうと、奥様、いかがでしたか?」
「き、木藤さん――」
慌てて遮ろうとしたけれど、木藤さんは私を会話に入り込ませない。
「舞台で演奏する姿、カッコ良かったんじゃないですか? いつものあずささんの雰囲気と全然違うもの」
「……そうですね。久しぶりに舞台で演奏する姿を見ることが出来て、本当に嬉しかった」
そう答えた西園寺さんの顔を思わず見上げる。
「嬉しい……かぁ。そうですよね。西園寺さんが一番見たいものだったんだろうから。舞台の奥様があまりに美しくて、見惚れちゃったんじゃないですか?」
「ちょ、ちょっと、木藤さん! やめてください――」
余計なことを聞かないで――!
焦る私を横に、西園寺さんが静かに言った。
「本当に。息をするのも忘れて見入っていました。自分にはもったいない自慢の妻です」
「……だって。あずささん、ちゃんと聞いてた? 最高の褒め言葉だよ?」
西園寺さんの言葉が思いもしないもので、瞬きもせずその顔を見つめてしまった。
「だからもっと自信持っていいんだって言ったじゃない。この子、西園寺さんに対して自信なさげなことばかり言ってるんで、もっともっと言ってあげてくださいよ。あずささんに、惚れまくりですよね――」
「木藤さん! もういいですから。西園寺さん、じゃあ私、着替えて来ますのでロビーで待っていていただけますか?」
「あ、ああ」
「じゃあ、すみません。後ほど!」
これ以上木藤さんに好き放題言わせるわけには行かない。西園寺さんを追い出すように控室の扉を閉めた。
そして木藤さんと向き合うと、その顔は、憎らしいほどにニヤニヤとしていた。
「照れちゃって」
「こ、困ります!」
「やっぱり照れちゃって」
完全に私をからかっている。私と西園寺さんの本当の関係を知らないから、そうやって私の反応を見て楽しんでいる。恨めしい気持ちをそのまま視線ににじませた。