囚われのシンデレラ【完結】
それから数日後、センチュリーホテルでソコロフ先生のレッスンがあった。それを終え、エレベーターで1階へと下りて行く。
西園寺さんが出張を終えた今も、細田さんの車に乗るように言われていた。エレベーターが地上階へと到着し、エレベーターホールを抜けてラウンジの方へと歩いて行く。
細田さんに連絡するため、バッグの中からスマホを探す。西園寺さんのオフィスはこのホテルから近い。15分ほど待てば、細田さんが迎えに来てくれるのだ。毎度、西園寺さんの送迎の合間にこうして私までも迎えに来てくれて。
今度、何かお礼をしないと――。
そう思いながら、見つけ出したスマホを手にして細田さんの連絡先を表示させようとした時だった。
「……あの、西園寺あずささんでいらっしゃいますか?」
突然声をかけられて周囲を見渡すと、会ったことのない女性が私をじっと見ていた。
「突然申し訳ありません。私、漆原公香と申します。どうしても、あずささんとお会いしたくて。失礼を承知で、ここで待たせていただいておりました」
「すみません、私、そちらさまを存じ上げないのですが……」
うるしばらきみかさん。私にそんな知り合いはいない。なのにこの人は私の名前を知っている。思わず身構えた。
目の前にいる女性は、色白で細身の物静かな雰囲気の人。小柄な身体が、緊張気味に両手を握り締めて立っている。
それなのに、私を見上げるその目には強い力のようなものを感じて、視線を逸らすことが出来なかった。