囚われのシンデレラ【完結】

「私、佳孝さんとお見合いをした者です」

お見合い――?

その言葉でハッとする。

未だ解決していないという縁談のお相手――。

目の前に立つ女性を改めて見て、激しく動揺する。

『前に話した、縁談相手の家の動きが少し気になる。万が一、直接君にコンタクトを取って来たりしたら――』

西園寺さんが言っていたことが、今現実で起きている。

一体私に、何を――?

どう考えても、いいことだとは思えない。西園寺さんからも、注意するように言われているのだ。それでわざわざ細田さんに送迎までさせている。ここは、すぐにでも立ち去るべきだ。

「申し訳ございません。私の勝手な判断でそちらとお話するわけには行かないので、失礼いたします――」
「お願いです……っ!」

素早く頭を下げて身を翻そうとした私の腕が掴まれる。その指の細さと、それに相反するあまりの力の強さに(とど)まってしまった。

「こんなこと、非常識だって分かっているんです。でも、どうしてもあなたに会って話をしたかった。あなたにしかきっと私の気持ちは分かってもらえない気がして。ただ聞いてくださるだけで、私は救われる。こんなこと、この一度きりですから」
「でも――」
「何年もずっと一人で胸に抱え続けて。でも、もうそれも終わりで。最後に、私の想いを知ってもらいたかった。ただ、それだけ……っ」

白い陶器のような無機質な肌に、涙が流れているのに気付く。まっすぐに伸びる黒髪が彼女の顔を覆う。

何年もずっと――。

この人も西園寺さんを想って来た人。
私をきつく掴むその手が、まるで私に必死にしがみついているみたいで。

「私がずっと佳孝さんを想っていたことが、このまま何もなかったみたいに消えて行くのが哀しいんです」

そんな風に悲痛な表情で悲しい言葉を吐く儚げな人を、振り切ることが出来なかった。

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