囚われのシンデレラ【完結】
「そういう狡い考えを持っていたから、罰が当たったんでしょうね。佳孝さんが帰国されるのをずっと待っていましたが、結局、佳孝さんはあなたを選んだ。私は、佳孝さんと結婚することは出来ませんでした」
「じゃあ――」
公香さんは、西園寺さんを想いながら他の人と――。
「はい。父の選んだ人と結婚することになります。仕方ありません、そういういう約束でしたから」
誰かを想う気持ち。
それだけは私にも分かる。分からるからこそ、辛い。
「私には、佳孝さんだけが光であり夢だった。バカだとお思いになるでしょう? ただ一つの思い出だけで恋をして、ずっと想い続けるだなんて。でも、私にはそれがすべてでした。私には、ただ待つこと、それしか出来なかったんです」
公香さんは自分の人生を投げうってまで、西園寺さんのためになりたいと思った。そして、現実として、好きでもない人と結婚する。
なのに私は?
西園寺さんのために何をしただろう。与えてもらうばかりで助けてもらうばかりだった。
それに、私だって公香さんと同じだ。今は西園寺さんに愛されているわけでもない。ただ契約しているだけ。
なのに、その真相を公香さんに伝えたくないと思っている。狡いのは私だ。
でも――。
「それでも、私はずっと佳孝さんのことが心から好きだった。一度でいい、私だけを見てくれる時間がほしかった。一度でいいから、私と――」
「ごめんなさい」
衝動的に私は頭を下げていた。
「出来ません。それがたとえ一日でも一瞬でも、あなたのところに行かせたりできません。私も公香さんと同じ。西園寺さんのことが好きだからです」
形だけの結婚をしている私が、そんなことを言える資格がないことは分かっている。でも、公香さんと同じだからこそ、私には出来ない。
西園寺さんの心も欲しい。
今になって強く思い知る。
「西園寺さんが他の人といる。そう考えただけで、耐えられない。だから、何を聞いても、あなたの気持ちが痛いほどに分かっても、私は――」
目の前の人がこれから苦しい道に進まなければならないと知っても、私は平気でそんな言葉を吐けてしまえる――。
そんな、自分の中にある残酷さを初めて知った。
「あずさ、さん……」
公香さんの絞り出したような声が、鼓膜にこびりつく。胸の中にまで入り込んでまとわりつく。
「――あずさ!」
身体中が痛みでどうにかなりそうになった時、その声が遠くから飛び込んで来た。