囚われのシンデレラ【完結】


「どうしよう……」
「どうした?」
「公香さん、私と会った次の日に、自殺を図ったって……」

あずさが、知ってしまった――。

震える唇から漏れる声が、次第に大きくなる。

「私、公香さんの気持ちを考えてあげていなかった。あの人のこと、傷付けてしまった。もしも、このまま死んでしまったら、私――」
「あずさ……っ」

激しく動揺し、取り乱した身体を思い切り抱き寄せる。

「大丈夫だから落ち着くんだ」
「……あの人が言ったの。一度でいいから、西園寺さんに自分だけを見てもらいたいって。そんな公香さんに、一日でも一瞬でも、公香さんのところに行かせたりできないって」

腕の中で、自分を抉るように言葉を吐き続けるあずさに、たまらなく痛みを感じる。

こうなると思っていた。だからこそ、避けたかった。

「あずさ――」
「好きでもない人と結婚しなければならない人に、そんな冷たいことを言って。他に、もっと言い方があったはずで――」
「あずさは何も悪くない。それに、公香さんは死んだりしない。絶対にだ」

激しく震える肩を強く抱きしめる。

「あずさ、よく聞くんだ」

肩を掴んで、その目を真っ直ぐに見た。

「俺はあの場であずさの方を守ったこと、一切後悔していない。それがこの結果になったとしてもだ」

あずさの目が、その心を映すみたいに揺れる。

「俺の方がよっぽど冷たい男だろ」

ふるふると頭を横に振るあずさの頭に触れる。

「彼女は病んでいる。普通なら当たり前に考えられることを考えられない。まともな状態ではなかったんだ。それはあずさのせいではない」

激しく不安げに揺らしていた視線を、俺の方へと向けて来た。あずさの手に自分の手のひらを重ねて、握り締める。

「自分を責めたくなる分だけ祈るんだ。彼女が助かるようにと、ただ祈れ」
「西園寺、さん……」

あずさの目が大きく見開かれた。

「人間なんて、もともと無力だ。出来ることなんて限られている。だから二人で祈ろう」

あずさが、その細い指から出ているとは思えない力で手を握り返して来る。

「はい……。はい、西園寺さん」

懸命に泣くのを堪えようとしているあずさの身体を抱きしめた。

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