囚われのシンデレラ【完結】
「信じてください。彼から電話がかかって来ても出ないようにしていました。母からの電話だったから出てしまったんです。まさか柊ちゃんといるなんて思わなくて。彼とはもう、話もしていないし会ってもいません。それに私、彼のことで、西園寺さんとちゃんと話したいと思っていることがあるんです――」
加藤柊と繋がっているのは誰だ――?
混乱する頭で考える。
7年半前、俺に隠れて父親からあずさのことを調べろと命じられたのは、それは――。
遠くから不気味な足音が近付いて来るみたいに、心臓の動きが早くなって行く。
「――プルルルル」
あずさの話を引き裂くように、俺のスマホが鳴り響いた。
「ごめん」
今にも壊れそうなほどに暴れ出す心臓のまま、その電話に出る。
「もしもし――」
(出勤前のお忙しい時間に申し訳ございまんせん。どうしてもすぐにお伝えしたいことがあって)
その電話の相手は、細田さんだった。
(常務のお宅にうかがう準備をしていたところ、以前、常務のご自宅前で見かけた奥様といらしたと思われる男性が、今、斎藤さんと一緒にいるところを見まして)
自宅前であずさといた男――。
それは、加藤柊だ。
(そのお二人の組み合わせに、どうにも腑に落ちなくて。それで、とりあえず常務にお知らせしておいた方がいいような気がしてご連絡させていただきました)
「それは、どこですか?」
(社の近くにある喫茶店”ノアール”です。そこに二人で入って行くのをたった今見ました)
遥人と、加藤柊が繋がっていた――。
過去へと急速に記憶が引き戻されて行く。
「ありがとうございました。今すぐ行きます。こちらへの迎えは結構です」
(承知いたしました。私も、気付かれないように様子をうかがってお待ちしております)
今にも崩れ落ちそうになる。そんな自分を必死に立たせ、上着をひったくるように着て玄関へと向かう。
「西園寺さん、何かあったんですか?」
「ごめん。今は時間がない、帰ってから話そう。ちゃんと、家で待っていてくれ」
「はい。分かりました」
この状況であずさと話す余裕はない。あの二人が一緒にいるところを押さえなければ、意味がない。
上手く働かない頭で無理やり考える。
このタイミングであの二人が会っているということは、昨晩、加藤柊があずさに電話したことについて話をするためか。
遥人のような男が、みすみす社の近くなんて危ない場所で会ったりしないはずだ。
そう考えると、加藤柊が居ても立ってもいられなくなって押し掛けた……。
どちらにしても。
あの二人は、俺の知らないところで知り合って、連絡を取り合っていた――。
マンションを駆け抜けて、大通りでタクシーを捕まえる。
その場所へと急ぎながら、これから知ろうとしている事実が怖い。
自分が、取り返しのつかない過ちを犯していたのではないかと、怖くて怖くてたまらない。