囚われのシンデレラ【完結】
「――騙すことになるのを分かった上で手を貸したって、どういう意味だ?」
「佳孝……」
二人が座るテーブルの側、向かい合う二人の間に立つ。俺を見上げた遥人は、一瞬驚いたような表情をしながら、すぐに落ち着き払って。それは、どこか微笑んでいるようにさえも見えた。
「こんなところで、立ち聞きですか。センチュリーの常務ともあろう人間が、そんな惨めなことをしないでくださいよ」
「俺の質問に答えろ!」
冷静になれと遠くで誰かが訴えるのに、恐ろしいほどに込み上げて来る怒りを制御できない。
「ここがどこだかお分かりですか。人の目がありますよ」
「外へ出ろ」
「まだ、この人と話が終わっておりません――」
「いいから、今すぐに出ろ……っ!」
席に座ったままの遥人の首元を捻り上げ、席を立たせた。
「――では、すみませんがお先に失礼します」
遥人が加藤柊に声を掛けていた。
「え……? ちょ、ちょっと――」
加藤柊が慌てたように中腰になったが、そんなことに構ってはいられなかった。俺にとって話すべき人間は、もう遥人だけだ。
「来い!」
身体中が滾るように怒りで満ちて。自分を失いかけていた。
掴んだ胸倉を、路地裏で乱暴に投げつけるように離した。
人通りのほとんどない、朝にも関わらず薄暗い路地に遥人が転げるように尻をついた。座り込んだ先から、俺を見上げて来る。
「どうしてあの男と二人でいるのか。そして、」
その遥人の目を、貫通してしまいそうな強さで見下ろした。
「これまで、おまえがしたことすべて言え!」
虚しいまでの怒号が喉をひりつかせる。
「佳孝のことだ。事実を知ればおそらくおまえは耐えられない。全部聞いたら、自分を許せなくなるぞ? それでもいいのか?」
据わった目。不気味なほどに落ち着いた声が俺に向けられる。
「呑気にあの子の前に立てなくなる。それでもいいのか――」
「いいから早くすべてを話せ! 7年前からこれまで、おまえが何をしたのか。残らず、すべて」
遥人は、座り込んだままふっと息を吐き、ゆっくりと口を開いた。