囚われのシンデレラ【完結】
「――7年前の佳孝とあの子の別れ。おまえが理解していることは、嘘で塗り固められたものだ」
嘘――?
「僕が全部仕立て上げた。おまえとあの子を別れさせるため。おまえが、あまりに聞き分けが悪かったからな。嘘をでっちあげるしかなかったんだ」
「……嘘って、何が、どこから、嘘なんだ――っ」
呻くような自分の声に、どれだけ激しい動揺が襲っているかを知る。
「進藤あずさが、加藤柊とおまえに二股をかけていたということ。最終的にはあの男を選んで、おまえを捨てたということ。全部だよ。そんなに聞きたいというのなら全部教えてやる」
うすら笑いを浮かべながら、遥人が捲し立てた。
「おまえに見せた、あの二人が抱き合う写真。あれは、僕が加藤柊をそそのかして仕組んだ写真だ。あの男、想いを告げる勇気もないくせに人一倍あの女に執着していて。本当にどうしようもない男だったよ。『金持ち御曹司と別れさせるために協力してくれ』と言ったら、二つ返事でオーケーした」
顔を歪ませ遥人が俺を睨みつけた。
「おまえが、僕の言うことを聞いてあの女を諦めてくれていたら、嘘を重ねる必要はなかった。加藤柊にたくさんの罪を犯させることもなかった。こんなにも長い間引っ張ることもなかった。なのにおまえが、最後の最後まで足掻くから。ずっと傍にいた僕ではなく、出会って間もない女なのことなんかを信じるからだ!」
「あずさは――」
「そうだよ。あの子はおまえのことしか見ていなかった」
あずさはずっと俺のことだけを――。
目の前の景色が一瞬にして消える。
遥人が俺を騙し、あずさを陥れた――。
「部屋の鍵は。俺のマンションの鍵は、どうやって……」
「佳孝と別れることが何より佳孝のためになるんだと、僕があの子に土下座までして説得した。その時、泣く泣く僕に渡して来たものだよ」
”それが彼女の答えだ”
遥人の話よりも、写真よりも、俺にとどめを刺したもの――。
あの瞬間の絶望が蘇る。
「おまえ――っ」
怒りに震え張り詰めた握り拳を、力のままに遥人の頬に打ち抜いていた。
「……っ」
俺はずっと、何も知らずにあずさを――。
あの頃の俺に向けられた笑顔が、スライドみたいになって。それが、身体中を粉々に砕け散らせる感覚になる。
この7年自分を構成して来たもの、過去、時間、思い、行為、すべてが俺に向かって襲って来て俺を打ち砕く。
もう、正気さなんてどこかへ行ってしまっていた。