囚われのシンデレラ【完結】
「腕、捕まっていいから」
「ありがとうございます」
恐る恐る手を伸ばして、その腕を掴んだ。
「それにしても、本当に食べるのには困らないな」
既にマップに視線を戻している西園寺さんの横で小さくなる。未だに西園寺さんに触れるのに慣れない。
酒の勢い。もしくは、かなりの必死さがないと難しい。ビール1缶くらいじゃ、全然ダメかも。
この胸の騒ぎよ、おさまれ――。
「あずさ、着いたよ。降りよう」
一人、頭の中でぐるぐると考えていたら、目的地に到着したみたいだ。西園寺さんに続いてバスを降りる。
「……おいで」
どれだけ胸が騒いでも、差し出された手のひらに恋する気持ちが溢れてしまうのだ。手のひらを重ねると、ぎゅっと指を絡められた。
そして、私は笑顔になれる。
「あ、見てください! 自家製のお店ですよ。ホットドッグ、美味しそう!」
目の前に広がる通りに胸が踊って、気付けば西園寺さんの手を引いていた。
「確かに美味そうだ。食べる?」
「はい!」
二人で、出来立てほやほやのホットドッグにかぶりつく。
「おいひい! あふあふで、たまらない」
「ん? 何だって?」
西園寺さんが笑う。熱すぎるくらいなのだけど、それがまたたまらない。
「美味しいって言ったの。西園寺さんはどうですか?」
「ああ、うまい」
「でしょ?」
ホットドッグにかぶりつく西園寺さんが、何だか不思議だ。いろんな西園寺さんが見られて嬉しい。
「あそこ、見てください。"幻の味"だって。そんなこと言われたら、食べないわけにはいかないですよね?」
「今、ホットドッグを食べたばかりだろ? カレーパンも食べるつもりか?」
目を丸くする西園寺さんに反論する。
「だって、幻ですよ? 気になりませんか? 今食べておかないと、絶対後悔すると思います」
大真面目に訴えると、西園寺さんがふっと息を吐き口元に手をやる。
「分かった。でも、よく考えてみろ。この後も、あずさが食べたいと思うものが次々出て来るかもしれない。その時、本当に腹一杯になってたらどうするんだ」
「……確かに、それはそれで後悔かな。でも……」
「じゃあ、二人で分けるか。そうしたら、少しずついろんなものが食べられる」
「はい! それがいいです」
「よし」
私を見下ろす目は、絶対に笑いをこらえてる。でも、ものすごく優しい。
「なんだか、お兄さんみたいですね。面倒見がいい兄って感じ」
「兄か……まあ、確かに、小さい頃妹をこうやって諭していたな」
西園寺さんには、由羅さんと言う妹さんがいる。