囚われのシンデレラ【完結】

 カレーパンを半分に分けて食べあった。

「幻の味って、こういうことを言うんですね。幻、最高!やっぱり食べて正解です」

西園寺さんが、何故か顔を後ろへと背けた。

「どうしたんですか?」
「いや、何でもないよ」

肩が、微かに震えている。もしかして――。

「また、笑ってます?」
「……笑ってない。決して笑ってなんかない」

絶対、笑ってる。

でも。西園寺さんが笑ってくれるなら、それでいい。

 それから、一緒に母へのお土産を選んで。いろんなお店を見て回って。握り締めてくれている手が温かくて幸せで。

「モカソフト! コーヒー店のソフトクリームなんですよ。有名みたいなんです! 本物の味だと思うんです!」
「食べたいんだよな?」

もう、分かって来たみたいだ。

「……はい!」

満面の笑で答える。

コーヒーの苦味がしっかりとあって、とても美味しい。

「西園寺さんは、いいんですか?」
「俺はいいよ」
「すごく美味しいですよ?」

ソフトクリーム、苦手なのかな……。

そう思っていると、西園寺さんがソフトクリームを持つ私の手を掴み、顔を近づけて来る。

「……じゃあ、一口だけ」
「え……っ?」

驚いて、見上げた。

「ホントだ。このソフトクリームは、いけるな。うまい」

魅惑的な笑みをたたえてそう言う。私はたちまちドキドキとして立ち尽くす。

「――あれ、あの人、見たことない?」
「ああ、知ってる! テレビにも出てたよね。雑誌なんかでも……」

そんな私の耳に、誰かのひそひそ声が届く。ついそちらの方へと目を向けてしまった。

「そうそう、確かセンチュリーホテルのイケメン御曹司」

え――?

一気に浮かれた気持ちが消える。

「実物の方がもっとイケメン……って、女の人と一緒にいない?」

女性二人組の視線が私に向けられる。明らかにこちらをじろじろと見ている姿が、他の歩行者たちの興味まで引き寄せ始めている。

「あずさ、行こうか」
「あ、は、はいっ」

西園寺さんに素早く腕を取られ、そこを立ち去った。
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