囚われのシンデレラ【完結】
人の多いメインの通りを外れて、裏道へと入った。
「ソフトクリーム、溶けそうだな」
あたりに人がいないのを確認して、西園寺さんが私の腕から手を離した。
「まだ、大丈夫ですよ! 急いで食べます」
路地裏のような場所で向い合って立つ。
「……うん。少し溶けても味は変わらないです。いや、もっと美味しいかも」
西園寺さんに申し訳なさそうな表情をさせたくなくて、今にも垂れ落ちそうなソフトクリームを必死に食べる。
「美味しかったー」
「……ごめん、あずさ」
食べ終えて顔を上げたら、やっぱりその顔に笑はなかった。メイン通りと違って、陽があまり当たらない。薄暗さが余計にその表情を翳らせる。
「ううん。気にしないでください」
その感情を払拭させたくて、明るく言った。
西園寺さんが、テレビや雑誌に出ている人だということをすっかり忘れていた。木藤さんも言っていた。自分の周囲でも、西園寺さんが話題になっていると。
私たちは、離婚する身だ。それに、これから西園寺さんは大変なことをしようとしている。そのことを考えれば、私のことなんて周囲に知られない方がいい。
西園寺さんは、私のことを考えてくれたのだ。
「……まだ、食べたいものもあっただろ? あずさが、焼きだんごの店をチェックしてたの気付いてた。ごめんな」
困ったように笑う西園寺さんに、胸がきゅっとなる。
「気付かれてました? でも、いいんです。もう十分楽しめたから。だから……今度は、二人きりになりたいです」
もう、何も、余計なことを考えさせたくない。
少し俯いた私の頭に、手のひらが載る。
「宿に行こうか。きっと、気に入ってくれると思う」
優しく髪を滑る手のひらに促されるように西園寺さんの顔を見ると、今度は笑ってくれていた。