囚われのシンデレラ【完結】
タクシーを降り立った先に広がっていたのは、木々に覆われた森のようなところだった。周りに建物は一切見えない。
「ここ、ですか?」
「ああ。この奥に宿がある」
西園寺さんに手を引かれながら、舗装されていない道を歩く。
聞こえるのは、自分たちの歩く足音と、風で揺れる葉のざわめきだけ。自然しかない、静かな場所。
鬱蒼とした中を歩き続けると、一棟の建物がようやく見えて来た。
平屋のモダンな建物。森の中に佇む、一軒家。大きな庭とその奥にはどこまで続いているのか分からない木々に囲まれている。
「……西園寺様、お待ちしておりました」
玄関と思われるところに、誰か人が立っていた。
「鍵をお渡しします。お食事については、レセプションの方までご連絡いただければ、いつでもお持ち致しますので、お申し付けくださいませ」
「ありがとう」
「では、ごゆっくりお過ごしください」
説明もそこそこに、宿の人は行ってしまった。
「ここって……」
きょろきょろと辺りを見回している私の肩に、西園寺さんがそっと手を置く。
「この森全部、宿の敷地だ。その中にコテージはこの一棟だけ。宿泊客は俺たちしかいない。あずさがしたいと言っていた、自然の中を散策もできる」
「ここ全部、私たちだけ……?」
「そうだよ」
誰にも邪魔されず、二人だけで過ごせる。
「こんな素敵な場所を選んでくれて、ありがとうございます」
想像していたよりも遥かに素敵な場所だ。
「とりあえず、中に入ろう」
西園寺さんが、私に視線を合わせる。
「はい」
その建物の中に入り、私はもっと驚くことになる。