囚われのシンデレラ【完結】
「すごい……」
すべての居室が横に並び、そしてそのすべてが庭に面している。天井から床までの大きな窓から、外の景色が全面に見える。まるで大きな写真のようだ。
庭に続くテラス、開放的なキッチン、天井の高いリビング……。
ウォルナットの床と庭の緑との対比が鮮やかで、自然と一体化したデザインにただただ感動する。
置かれた家具は、どれも温かみがあって、広いのにどこか居心地がいい。
「西園寺さん、グランドピアノがあります!」
リビングから一段高くなったところに、スタインウェイが置かれていた。
「確か、ピアノ弾けるんですよね? 弾いてください!」
大きく手招きをする。
「最近は全然ピアノに触っていないから、無理だ」
「少しでいい。簡単な曲でもいいですから。お願い……っ」
両手を合わせ、頭を下げる。
「……じゃあ……後で」
「ありがとうございます!」
その言葉を聞いてすぐに顔を上げると、西園寺さんが悔しそうな顔をしていた。
「まったく。あずさに懇願されると、本当に困る」
見回すものすべてに視線を奪われて、ついつい声を上げてしまった。
「ねえ、見てください。本物の暖炉がある!」
リビング中央に、薪と黒い暖炉があった。暖炉など初めて見た。
「夜はまだまだ冷えるから。使ってみようか」
「はい!」
忙しなく動き回る私に、呆れるでもなく付き合ってくれる。
「……お風呂。広くて露天風呂みたい」
ここも庭に面して大きなガラス窓張りだ。
私たちしか宿泊していないのだから誰かに見られる心配はないと分かっているのに、あまりの開放感に、勝手に恥ずかしさが込み上げる。
「ちゃんと温泉なんだ。夜になれば、満天の星を見ながら入れる」
「それは、楽しみ……」
どうしてだろう。何故だか緊張して来る。
「せっかくだし、一緒に入る?」
思いもしない言葉を西園寺さんが発した。
「え……っ?」
聞き間違いだろうか。その顔をまじまじと見てしまう。
西園寺さんがそんなことを言うはずない――。
「こんなに広いんだ。二人で入ることを想定しているんじゃないかな。それに、あずさも、何でも二人で楽しみたいって言ってなかった?」
にこにこと私を見るから返答に困り、その視線すらそらしてしまう。
「そ、それはそうですが、でも、それとこれとは、ちょっと違うような気もするのですが……」
「何が違う? もしかして、俺と入るのは嫌なのか?」
「そんなことは……っ」
少し沈んだような声に、慌てて顔を上げると――。
「ごめん、ごめん。全部冗談。嘘だよ」
「冗談……?」
目をぱちくりとさせる。
「あずさの反応が見たくて。ちょっとからかった。そうしたら、本気で困ってるから、もっと困らせたくなった」
「わざと……?」
「ごめん」
「ひどい!」
おかしいと思ったのだ。西園寺さんの発言とは思えない。
「でも、安心しろ。あずさを本当に困らせるようなことをする気はない」
そう言って笑う西園寺さんを、複雑な感情のまま見つめる。