囚われのシンデレラ【完結】
「え……っ? 今、撮ったんですか?」
「なかなかいい表情だな。いい写真が撮れた」
呆気に取られている横で、西園寺さんが満足そうに画像をチェックしている。
「あずさの照れてる顔、可愛いよ」
「……今の、わざとですね?」
その魂胆に気付く。
「わざと? 何が?」
白々しくとぼけている。
西園寺さんの撮った写真には、西園寺さんが私を見つめてくれる柔らかな表情と、その西園寺さんを目を見開いて見ている私。
完全に無防備な私だ。絶対それを狙ったに決まっている。
ちゃんと、表情を作りたかったのに――そう、文句を言おうとした。
「あずさの、素を表している表情を撮りたかったんだ。ここに、嘘は一つもない」
――嘘はない。
「それに、あずさはどんな表情をしていても可愛いよ」
そんなことを言うから、もう、許してしまうしかない。私は西園寺さんにはかなわないのだ。
「……この写真で、いいです」
結局、また照れ臭くて俯くしかない。
ひゅっと、冷たい風が吹き抜けた。
「……くしゅん」
いよいよ、寒くなって来た。
「寒そうだな」
「大丈夫――」
西園寺さんの影が覆う。
「気付いてやれなくて悪かった。少しでも日が陰れば寒くなる」
西園寺さんの着ていたジャケットを、私の身体を包み込むように掛けてくれる。
「西園寺さんが、寒くなります」
「俺は平気だ。鍛えてるから」
目を細めるその表情と、ジャケットから伝わる温もりにたまらなくなって。その胸にこつんと頭を寄せた。
「ごめんなさい」
「平気だと言ってるだろ?」
大きな手のひらが、優しく、でも、やっぱりぎこちなく私の頭に添えられる。
ドクドクと聞こえてくる西園寺さんの鼓動を、いつまでも聞いていたいと思ってしまった。