囚われのシンデレラ【完結】

 今の今まで、明るくふざけて笑っていた唇が、急くように押しつけられる。

このまま、もっと、私を求めて――。

その欲が、西園寺さんの腕を掴む手の力を強くさせる。そして、もっと深く重なり合いたくて、自ら口を開ける。熱く濡れたものに触れる。次第に大きくなる絡まる音が、淫靡に響いた。

「……ん、っ、」

私の頭を抱えるように押さえ、深く奥にと入り込む。激しく動き回る舌が、勢いよく離れて行ったと思ったら、それがそのまま私の耳たぶに触れた。

「あ……っ」

その瞬間に身体全体がぶるりと震える。それごと閉じ込めるみたいに西園寺さんの腕が私の腰をきつく抱き寄せ、もう片方の手のひらが頭から耳へ、首筋へと荒っぽく滑り落ちて行く。そして、浴衣の合わせ目に辿り着いた時、その手が肌に沿うように入り込んだ。

少し冷たい手と熱い唇の、その相反する感触に、呼吸が乱れる。

もっと、触って、抱きしめて。

何もほかに考えられないくらい、ただ、西園寺さんだけを感じていたい。

このまま、もっと――。

西園寺さんの唇が、私の鎖骨あたりへと落ちて来た時、その唇の動きが止まった。
私を抱きしめたまま、何かに耐えるようにじっとしている。

「西園寺、さん……」
「――ごめん」

突然身体が離れると、私に背を向けた。

「今頃、さっきのシャンパンの酔いが回って来たみたいだ」

そう言いながら、私から遠ざかる。

「暖炉の火って、結構綺麗なもんだな」

西園寺さんがリビングにある暖炉の前に座った。

「西園寺さん」
「あずさ、暖炉は初めて見るんだろ。暖かくて、気持ちいいぞ」
「西園寺さん」

少しだけ乱れた襟元を直し、西園寺さんの元へと向かいすぐそばに立つ。

「あったかいから、冷たいものでも飲むか。きっとたまらなく美味しく感じるぞ。何か持って来るよ」

私を見ることもなく立ち去ろうとした。
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