囚われのシンデレラ【完結】
「ひゃあ」
「そんな顔……だめだろ?」
きっと、どうしようもなく淫らな顔をしているんだろう。
「俺の方が耐えられなくなる。もっと焦らして焦らして、我を忘れて乱れるあずさを引っ張り出したいのに、」
もう、とっくに引っ張り出されてる。
「声も……、耐えられなくなって真っ赤にしてる顔も、何もかもが、可愛いくて、」
切なげにしかめられた表情が、私の顔の真正面に現れた。
「めちゃくちゃにしたくなる」
長い指が、浴衣をかきわけ撫でるように触れる。欲望を孕んだ目が私を見つめる。
「ここ、触れる前から、こんなにして」
「こんな風になるのは、あなた、だから……っ」
上りつめる快楽から抗うように髪を振り乱しても、その鋭い視線からは逃れられない。
西園寺さんがその表情を歪めた。
「全部俺のせいなのに。俺を忘れられないように、俺しか欲しいと思わないように、この身体に刻みつけたい」
熱に浮かされたような声。欲情した眼差し。私だけが知っている西園寺さんだ。
「そんな残酷なことをしたいと言う。酷い男だろ?」
「して、ください。いつまでも消えないように、刻みつけて……っ」
そう叫ぶように言うと、熱くて硬いものが入って来た。苦しくて切なくてたまらないのに、目の前が真っ白になるような快感が身体を貫く。
「あずさ……っ」
掠れた声で何度も私の名を呼ぶ。
「ごめん」
苦しみに満ちた声が、鼓膜にこびりつく。
確かに今、西園寺さんと繋がって誰よりも近くにいるのに。切なさが溢れて仕方ない。
こうして西園寺さんと肌を重ねるのは、西園寺さんも私を想ってくれていたと知ったあの日以来。もう随分前のことのように思える。
あの時、これからは西園寺さんにいつだって抱きしめてもらえるんだと幸せだった。
「こうするしかなくて、ごめん……っ」
私はただ頭を振る。
「あずさを、壊してしまうかもしれないのに、止められない」
激しい腰の動きで、逃す間も無く快感が押し寄せる。
こんなにも激しい快感を注がれてしまったら、身体が強烈に刻み込んで記憶する。
欲しくても、もう望むことはできないのに。
「それは、西園寺さんも、同じでしょ? それでも、欲しいと言う私を許して」
西園寺さんの顔の輪郭を、確かめるように触れる。真っ直ぐに伸びる眉、綺麗な上昇線を描く鼻、凛々しい唇、それらをこの指でなぞる。
「ずっと、ずっと、覚えていたい。一生消えないように、西園寺さんの跡を残して」
その黒髪に両手を差し入れて、溢れるままに口にした。