囚われのシンデレラ【完結】
そこからすぐの路地裏に止めてあった車の後部座席に乗り込む。運転席に座った斎藤さんが、私に向かって勢いよく頭を下げた。
「本当に君には酷いことをした。許してもらいたいとも思っていない。ただ、君にはいつかきちんと謝らなければと思っていた」
私がこれまで見て来た斎藤さんとは別人のように、深く頭を下げる。身体を折り曲げたままその頭を上げようとはしない。
その姿を見ても、私は何も言えなかった。簡単に、”許します”なんて言えるはずもない。この胸に横たわる哀しみは、この先もずっと続いて行く。
「僕は、君と佳孝を別れさせるためだけに動いて来た。君の幼馴染を巻き込んだのも僕だ。そして、またも、こうして二人は別れなければならなくなった」
いつまでも頭を下げたままの斎藤さんを見つめる。
「一つだけ教えてください。どうして斎藤さんは、そこまでしたんですか? 西園寺さんと斎藤さんはお互い大事な友人同士だったはずです。いくら会社のためとは言え、どうしてあんなことを……」
一番近くにいたはずの人が、西園寺さんを変えてしまうほどに苦しめたのはどうしてか――。
「……やっぱり、佳孝は君にそこまでは話していなかったんだな」
そう言うと、斎藤さんがゆっくりと顔を上げた。
「好きだったんだよ。ずっと。物心ついたときから」
「……え?」
斎藤さんの言葉の意味が分からない。
「友人としてではなく、恋愛感情として」
唖然として言葉を失う。
「君に対する嫉妬だ。僕は何年も想いを秘めて佳孝のそばにいたのに、突然現れた君にあっという間に佳孝を奪われて。佳孝のためだセンチュリーのためだと、自分の嫉妬を正当化して来たんだ」
何も言えないまま、ただ斎藤さんをじっと見つめる。
「君に完全に心を奪われた佳孝を見ているのが苦しくてたまらなかった。君が妬ましくて憎かった。佳孝の相手が公香さんなら、あいつの心全てまでも奪われることはないと思った。僕が佳孝の一番のままでいられるって、そんな思いもあって。どうしても公香さんと結婚して欲しかったんだよ」
そう言い終えると、斎藤さんが表情を歪めた。
「僕は、佳孝にも君にも許されようとは思っていない。佳孝は、君を苦しめた僕を絶対に許すことはない。佳孝にとって君は、自分の人生を犠牲にしても守りたい人だから」
そんな斎藤さんを真っ直ぐに見据える。