囚われのシンデレラ【完結】

「斎藤さんの言われた通り、どんな理由があろうとも、あの人を苦しめたことを許すことは出来ない。斎藤さんのしたことが消えることはありません。だから――」

これだけは斎藤さんに伝えたいと思った。それを出来るのはこの人しかいない。

「何があっても、絶対に西園寺さんを守って」

斎藤さんが目を見開く。そして、その顔を前方へと向けた。

「近々、佳孝は記者会見を行う。佳孝の父親である社長や漆原に勘付かれないために、なるべく早く奇襲で行う。とにかく、あいつ一人で、世間の前に出るつもりだ。それがどれだけ重く大変なことか……」

――記者会見。

西園寺さんの背負うものを思うと苦しくなる。

「センチュリーほどの企業ともなれば、社会的影響力も大きい。粉飾決算を創業者一族の人間が告発するんだ。大騒ぎになるだろう。そして当然、佳孝も矢面に立たされる」

もちろん、想像はしていた。でも、斎藤さんの言葉でよりその重大さを思い知る。

「勝手なことをされて、漆原にも不都合なことがある。佳孝の身も無傷ではいられないかもしれない。でも、その時は――」

前を見ていた斎藤さんが、再び私の方へと顔を向けた。

「何があっても、僕は佳孝の身を守るつもりだ。こんな人間でもなお生きているのは、そのためだと思っている」

強い眼差しが意味するもの――。

その斎藤さんの強い覚悟に、ドクンと深く重く胸が鳴る。

「あいつが身を切られるほどの思いをしてまで君と別れたのは、すべての困難と危険を一身に受けるため。でも……どれだけ時間が経てばいいのか分からないけれど、いつか……いつか、佳孝が君の元に帰れるように。必ず佳孝のことは守るから。君に約束する」

斎藤さんなりの西園寺さんへの想い。いざとなれば、自分の命をも差し出す覚悟なのだ。
それを知っても。私にとって一番大切なのは西園寺さんだから。

「どうか、西園寺さんを守ってください」

手のひらをぎゅっと握り締め声を絞り出した。

「……僕が言うまでもないことかもしれないけど、」

そう言って私を見る。

「佳孝が君との繋がりを一切残さず関係を完全に断ち切るのは、すべて君を想ってのことだから。中途半端な行動は、相手に隙を与えることになる。だから、佳孝の君への想いを少しも誤解したりしないで」
「はい、分かっています」

西園寺さんがすべてを私に話していないだけで、私を脅しの道具にされたりしたのだろう。私の知らないところで守られていることが、きっとたくさんある。

こんなことを言ってはいけないのかもしれないけど、少し斎藤さんが羨ましい。そこにいて、西園寺さんを守れるから。

斎藤さんが、西園寺さんを愛していた――。

思いもしなかった告白にただ驚いた。でも、その眼差しは本物だった。

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