囚われのシンデレラ【完結】
「このコンクールは、1次予選から世界中にネットで生配信されてる。どこにいても、あなたの演奏を聴ける」
あれから二年。西園寺さんは、どこでどうしているんだろう。
もしかしたら、西園寺さんの心を動かす人との出会いがあったかもしれない――。
そんなことを思ってしまう夜もあった。
そうだとしても。どこかで、ただ、聴いてくれたらそれで十分。
だから――。
「私、絶対にファイナルに残りたいんです。そうしたら、日本でも少しは記事になりますよね?」
「そうだね。世界的コンクールだから、日本人が本選に進出したとなればニュースにもなるよ」
「そうすれば、西園寺さんにも届く気がするんです。今の私をどこかで見てもらえたらそれでいい」
「西園寺さんのことだもの。記事を見るまでもなく、何が何でも聴いてるわよ。当たり前じゃない」
その言葉に苦笑すると、「あー、なに、その表情」と木藤さんが意地の悪い目を向けて来た。
「もしかして、西園寺さんに新しい相手がいるかも、なんて思ってる?」
「い、いえ……。でも、もしもそうだったとしても、西園寺さんが今幸せなら、それで――」
テーブルの上の手を、無意識のうちに握り合わせる。
「はいはい。強がりはいいから。そういうあなただって、さっきの男の子、あずささんのこと好きそうじゃない?」
「え……えっ?」
さっきって、マルクのことだろうか――?
「ち、違いますよ。だって、あの子と10歳も年が離れているんですよ? あり得ない」
「年齢なんて関係ない。今のあずささん、最高に魅力的だし。こっちの肉食男子どもも放っておかないよなー。あぁっ、西園寺さんを見つけ出して告げ口したい! 脅したい。分からせたい!」
「ちょ、ちょっと……! 一体、何を言っているんですか!」
相変わらず一人暴走しそうになる木藤さんをいさめる。
「……あっ、そろそろ結果が出るんじゃない? ホールに戻らないと」
そんな私を跳ねのけるように腕時計に目をやった木藤さんの言葉に、ドクンと胸が鳴った。