囚われのシンデレラ【完結】
目を閉じて、じっと待つ。
23名中、次に進めるのは約半分の12名。私の番号は終わりの方だ。呼ばれて行く名前をただじっと聞いて行く。次第に大きくなる心臓の音が、私の身体をぶるぶると震わせる。
どうか、お願いします――。
「――アズサ シンドウ」
一瞬、無音になる。
「アズサ、やったね! 君は最高だ――」
私の肩を抱こうとしたマルクをさりげなく押し退け、木藤さんが私の腕を掴んだ。
「あずささん、良かったね」
通った――。
マルクと木藤さんの声で、それが事実だと認識する。次の瞬間、喜びよりも安堵で大きく息を吐いた。
「次が勝負よ」
「はい」
――次が勝負。
その言葉を噛みしめる。強い眼差しをしっかりと見つめ返した。
「絶対に、ファイナルに行きます」
ファイナルへの切符をこの手に掴めるのか、次にかかっている。
本番の明後日まで、悔いのないように。気合いを新たに、自分を奮い立たせる。
『2次予選は、ソコロフ先生も聴きに来るって言っていたから。当日、演奏が終わったら会いましょう』
私にそう告げた木藤さんと別れた。
2次予選まであと2日。与えられた時間は少ない。
「――アズサ。明後日、頑張って。心から応援しているから」
そこにまだいてくれたマルクが、いつになく真面目な目で私を見下ろす。
「ありがとう。じゃあ、私、練習室に行くね――」
そんなマルクを見上げ、立ち去ろうとすると腕を不意に取られた。
「……さっき言ったこと、嘘じゃないから」
「マルク―ー」
「今は、それだけ。あとは、アズサのコンクールが終わってからね。じゃあ!」
一方的にそう口にすると、手を上げてあっという間に行ってしまった。
私も早く、練習しなくちゃ――。
心はもう、2次予選のことで埋め尽くされる。
その日の夜から、許す限りの時間を担当教授がつきっきりでレッスンをしてくれた。1次予選は『自分の力で受けて来い』というスタンスだったのが、本選に残れるかどうかがかかる2次予選は違うらしい。
「アズサ。2次で落ちるか、本選に残れるか。天と地だぞ。この後のキャリが大きく変わる。私の評価も大きく変わる。失敗は許さんぞ」
本番直前に、こんな風にプレッシャーをかけて来る先生は日本にはいなかった。日常のレッスンはどんなに厳しくとも、本番直前だけは励まし自信をもたせることを言うのが普通だ。
なのに、目の前の先生は――平気で追い詰めようとする。
それはこちらも望むところだ。
「私も、失敗するつもりはありませんので。まだ直せるところ、変えた方がいいところ、全部言ってください」
「本番直前まで、1日48時間にして欲しいくらいだ。直前になればなるほど、直したくなるのはどうしてだろうな」
ぶつぶつ言う先生に苦笑する。本当に、本番直前まで、先生の自宅でまさに"熱血指導”が続いた。
そして。2次予選、私の出番を迎える。