囚われのシンデレラ【完結】
予選までの会場とは違う大ホールだ。ホールを埋め尽くす満員の聴衆。そして、眩いばかりのスポットライトが私を刺すみたいに照らす。バックにはオーケストラが控えている。
ファイナルは、2曲の協奏曲を演奏することになっている。一曲目のモーツァルトを演奏し終えて、次はいよいよチャイコフスキーだ。
チャイコフスキーのバイオリン協奏曲を舞台で演奏するのは10年ぶりだ。
大学2年の時の、大学のオーケストラとのコンチェルト。あの時、西園寺さんと別れた失意の中で、それでも『あずさのコンチェルトを聴いてみたい』と言った西園寺さんへ向けて必死に演奏した。
10年経って、私はここにいる。
今もまた、会うことのできない人に向かって、私の演奏を届けようとしている――。
私を迎え入れてくれるお客さんの拍手が鳴り止み、指揮者とアイコンタクトを取った。
オーケストラの音が静かに響き始める。目を閉じて、その音に耳を澄ませた。
――チャイコフスキー バイオリン協奏曲。
第一バイオリンによって始まる主題に、オーケストラが合いの手を入れ曲は進み盛り上がって行く。そしてその盛り上がりが頂点に達した時、ソロのバイオリンの登場を待っていたように、ふっと音が消える。
最初の一音を弾く直前、そのタイミングに合わせるように呼吸をした。この音符のためだけの、唯一無二の音を鳴らす。
出だしから人を惹きつける、存在感のあるメロディー。ソリストに寄り添うようにオケの音楽が奏でられる。私と、オーケストラとの掛け合い。手と弓と。そして自分の身体が一体になって、一つの旋律を生み出して行く。