囚われのシンデレラ【完結】
それから4日と半。猛練習に明け暮れた。
練習、バイト、練習、練習、バイト、練習、練習、そしてバイト、練習――。
西園寺さんに会いたい気持ちを堪えて、ただひたすらに理想とする音を追い求めていた。
――俺が、見たいから。
西園寺さんにそう言われたら、どうしたって頑張れる。
今日まで、西園寺さんに会うことを励みにこれ以上無理だというくらい頑張って来た。自分の部屋のカレンダーには、この日の日付を大きく丸で囲んでいる。
ようやく、会える――。
午前中は大学の練習室で練習をして、そのあと会う約束をしている。大学へと向かう早朝の電車内も、連日、連休中の開放感で溢れていた。
みんな、遊びに行くんだろうな――。
バイトと練習しかしていなかった自分を思い出して苦笑するけど。
でも――。
どんな観光地より、どんなに美味しい食事より私を幸せにする時間がこれから待っている。
たったの4日だ。それまでだって、そんなに頻繁に会っていたわけでもないのに、どうしてこんなに会えない日が長く感じてしまうようになったのだろう。
午前中、5時間ほど練習した。
西園寺さんが、大学まで車で迎えに来てくれることになっている。大学の正門のところまで出て来ると、西園寺さんの黒い車が既に停まっていた。すぐに駆け寄ると、窓ガラスが開き西園寺さんの姿が現れた。
「乗って」
素早く車に乗り込む。
「食事はした?」
「まだ、です」
「良かった」
「これから、どこに行くんですか?」
この日の行先をまだ聞いていない。
「――俺の家」
「え……っ?」
思わず、思い切り西園寺さんの方を見てしまった。
「あ、あの、ご家族は――」
「そういえば、言ってなかったか。大学卒業してからは、一人暮らしだ」
「えっ?!」
「どうかした?」
今度は大きな声を上げてしまった。そしてすぐに後悔する。
「い、いえ……」
これじゃまるで、警戒しているみたいだ。でも少し、いやかなり驚いてしまった。恋人なんだから、いつかは西園寺さんの部屋に行くことにもなるだろう。でも、それはまだ先のことだと勝手に思っていた。
どうしよう、顔、引きつってるかな――。
不安に思っているだなんて、西園寺さんに気付かれたくない。ちらりと運転する西園寺さんの横顔を盗み見る。その横顔は、いつもと同じ落ち着いたもので。それとは正反対に、私の緊張は加速していく。
まだ、先に進むのは少し怖い。そう思ってしまう自分がいた。