囚われのシンデレラ【完結】
とにかく早く――。
全速力で走っていた。雨なんて気にもならない。跳ね返る水しぶきにも構わずただひたすらに走る。
早く、西園寺さんに会いたい――。
もう、それしか頭にも心にもなかった。
少しでも早く会いたくて、待ち合わせの場所ではない、西園寺さんが勤めるホテル近くの公園に向かっていた。公園で待っているとメッセージを送ると、少しして返信が来た。
【仕事が終わり次第、すぐ行く】
スマホを握りしめながら、雨が降りしきる中、西園寺さんを待った。傘を叩く雨音が心臓の鼓動を煽る。
「――進藤さん」
その声に振り返る。
そこには、この一か月、焦がれ続けていた人がいた。夕方を過ぎた雨降る公園に、ほかに人なんていない。
「オーディションは――」
「合格しました」
私の元へと駆け寄って来るなり聞いて来た西園寺さんに、はっきりと告げた。
「合格できたんです!」
「良かった……本当に良かった」
見上げた先にあったその顔が、くしゃくしゃの笑顔になる。
西園寺さんのおかげで、顔を合せることは何度か出来た。電話で話もした。でも、こうしてちゃんと間近でその顔を見たかった。
西園寺さんに触れたかった――。
「会いたくて、早く抱きしめたくて、たまらなかった」
私が言葉にするより先に、強く抱きしめられた。