囚われのシンデレラ【完結】

 握りしめられた手のひらが、酷く熱い。何かを言葉にしようにも、どれもこの心とは別の言葉が出て来そうで結局何も言えなくて。その代りに西園寺さんの手を強く握り返した。

 西園寺さんのマンションにたどり着くと、ドアが閉じると同時にそのまま腕を強く引き寄せられ唇を塞がれた。これまでのキスとは全然違う、ぶつけるようなもの。その、感情を剥きだしたようなキスに、怖さより甘い疼きの方が上回る。いつも落ち着いていて優しい西園寺さんの感情を、そのまま見せてくれている気がした。

 重なり触れ合っていた西園寺さんの唇が私の唇を割り、熱く濡れたものが押し入って来る。

「――っん」

自分の舌に初めて触れる他の人の感触に驚きながら、すぐに身体から力が抜けてしまいそうになって。絡まり合うそれに懸命に応える。立っているのもやっとの私の腰を、西園寺さんの手が強く抱き寄せた。

 初めてここに来た日に感じた不安なんて嘘みたいに忘れて、必死にしがみつく。

 誰かと身体を重ねたいと思う気持ちが、今まで私には分からなかった。得体が知れなくて、恥ずかしくて少し怖くもある。そういうものだった。

でも。

心から好きな人といれば、自然と込み上げるものだと初めて知った。後から後から溢れて来る。もっともっと近づきたい。もっと、触れ合いたい。身体中がその人を求める。

「――俺のものにしてしまいたい」

絡まった唇が離れて行くと、低く擦れた声が私の鼓膜を揺らした。私をきつく抱きしめる西園寺さんの身体が、早い鼓動を刻んでいる。それが何を意味するか、私でも分かる。

「……いい?」

西園寺さんの胸のあたりのシャツを強く握り締めて、頷いた。
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