囚われのシンデレラ【完結】


 西園寺さんと一つになった後、目を細めるように私を見つめて、髪を優しく撫でてくれた。

「……大丈夫か?」
「はい。大丈夫――」
「本当は、もっと時間をかけていこうと思っていたのにな」

彼が私の額に唇を落とした。髪を撫でていた手のひらがそのまま私の頬を捕らえる。

「こんなにも衝動を抑えられない人間だったんだって、あずさといると気付かされる」
「そんなことないです。だって、西園寺さん、最後までずっと私を気遣ってくれてました」

私のことばかり気遣って、全然衝動的なんかじゃなかった。そんな西園寺さんの優しさをただ受け取るだけで精一杯だった。

「申し訳ないくらい――」
「バカだな」

大きな手のひらが私の頬を包み込む。

「そんなこと思うな。ずっと、こうしたいって思ってたんだ。それが叶った日だ。それだけで十分嬉しい。あずさだから、満たされる」

私を見つめる西園寺さんが、これまで見たどのときのものより近くに感じた。

「……どうしようもなく好きだよ。俺の中、あずさで一杯だ」

囁く声も見つめる目も、どれも私を甘く甘く包む。

「好きが溢れて、これから俺は大丈夫かな。これまで感情を(とど)めていた栓が、どこかに飛んで行ってしまったかもしれない」
「さ、西園寺さん……そんなこと言うの?」

お互いを見つめながら横たわっている。その西園寺さんの顔を、まじまじと見つめてしまう。

「そんなこと?」
「だ、だって、これまでの西園寺さんからは、想像できなくて――」

驚く私を見て、ふっと笑った。

「ものすごく耐えていた。嫌われないように、落ち着いているふりをするのも結構大変なんだぞ。でも――」

長い指が私の唇をなぞる。

「多分、もう耐えるのは無理だ。申し訳ないけど、覚悟して」
「か、覚悟、ですか……?」

たくましい腕が私を西園寺さんの胸へと抱き寄せた。

「そう」

少し汗ばんだ西園寺さんの素肌が心地よくて、頬を摺り寄せてしまう。耳に届く呼吸音も、何もかもが愛おしくて。

「――あずさ、好きだ」
「私も――」

そう答えると、柔らかな唇が重なる。さっきまでの深く求めるようなキスじゃない。それもまた甘く私を満たして。

「……ここの、痣」

唇が離れると、私の左顎下にある痣に西園寺さんがそっと触れた。

「ああ、これ、バイオリンがちょうど当たるところで。バイオリンやっている人にはよくあります――んんっ」

そこに濡れた唇が触れて、びくんと身体が跳ねる。

「あずさが、頑張ってる証だな――」
「い、いえ、体質にも、よるし、あんまり見た目もよくなくて……あっ」

下顎に熱い舌が触れる感覚に、身体の中心からまたも刺激がせり上がって来そうになる。

「そんなことはない。俺には、この痣でさえ綺麗だ」
「さ、西園寺さん――っ」

背中に手を回され、抱きしめられて。

「オーディション、本当に良かった。あずさの努力が報われて、本当に嬉しい」

私を嫌というほどに甘く溶かしていく。
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