囚われのシンデレラ【完結】
着替えを済ませ、ロビーに走って行くと、ソファーに座る母の姿を見つけた。
「あれ、今日、来られなかったんじゃ……」
パート先の都合で、見に来られないことになっていたはずだ。
「うん、それが少し終わるのが早まったから、最後の一曲でもって思って急いで来たの」
「こんな時間まで、待ったんじゃない?」
演奏が終わって時間が経っている。周りを見回すとほとんど人はいなかった。
西園寺さんは――。
気になったけれど、姿はない。
「いいのよ。挨拶とかいろいろあるでしょ。もう、帰れるの? だったら一緒に――」
「ご、ごめん!」
勢いよく頭を下げた。
「このあと、ちょっと約束があって」
「約束?」
「ほんと、ごめん」
なんとなく詳しく説明できなくて、顔を上げられない。
「……そう。なら、仕方ないわね。もしかして、お母さん以外にあずさファンでも出来たのかしら?」
「え……っ」
結局、顔を上げてしまった。そこには意味深な笑みを浮かべたお母さんの顔。やっぱり、親は侮れない。
「まあ、いいわ。家に帰ったら話して。じゃあ、先に帰ってる」
「ごめん」
玄関まで、お母さんを見送った。
ホールの外は、梅雨明けの名残のじめじめとした夜風が吹き抜けていた。