囚われのシンデレラ【完結】


 9月に入ってすぐ、先生に呼び出された。

「……え? 私がですか?」

教授に言われた言葉に、驚きを通り越して固まる。

「そうよ。学部長直々の推薦だから心して臨みなさい」

それは、秋――11月に行われる大学のオーケストラの定期公演で、私がソリストに指名されたという話だった。

 学生で構成されるオーケストラが、年に3回ほど公演を行う。協奏曲(コンチェルト)が演目に入って来る場合、そのソリストはオーディションか学部長の推薦で決まる。そして、推薦の場合、99.9%、選ばれるのはAオケの学生から。Aオケが学内のエリート集団という位置づけだからだ。
 そもそも、外部のホールで公演をすることが出来るオーケストラ自体がAオケだ。本来なら、Bオケの私なんて無関係なのだ。

「この前のサロンコンサート、あなたの演奏かなり良かったから選ばれたのも不思議じゃない。大きなチャンスなんだから、こういう機会を絶対に無駄にしてはダメ。努力だけでも才能だけでもだめなの。めぐり合わせ、降って来たチャンスをいかにつかみきれるか。コンチェルトでいい演奏が出来たら、学内の推薦ももらえる可能性が高い。大きなコンクールを受ける足掛かりにもなる。良い条件で留学することも出来る。とにかく、頑張るのよ」

「は、はい」

まだ、実感が湧かない。

「――曲目は、チャイコフスキーのバイオリンンコンチェルト」
「え……!」

実感が湧かないなんて呑気なことを思っていた自分の目が、一気に覚める。

「絶対に、頑張ります」

チャイコフスキーのコンチェルトを演奏できる――。

憧れに一歩近付ける。
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