囚われのシンデレラ【完結】
「なあ、あずさ」
「はい」
西園寺さんが、どこかかしこまった表情をして私と向き合った。
「あずさはまだ大学二年で、先のことなんて考えられないと思う。それが普通だ。でも、これだけは頭の片隅に置いておいてほしい。俺は、二人でこうやって過ごす時間のその先にも、あずさがいてほしいと思ってる。俺には、あずさ以外には考えられないから」
私の肩を掴む手に、力が込められたのに気付く。
「いつか、あずさもそう思ってくれたらいいと思ってる。つまり、だから……」
少し躊躇い、口ごもり、そして何かを振り切るように西園寺さんが私を見た。
「俺は、あずさをただの恋人だとは思っていないから。あずさのために出来ることならなんでもしたい。それを遠慮するような間柄ではいたくないということだ!」
「あ、ありがとうございます……」
前のめりで訴えるように言われて驚く。
「私も、西園寺さんにとって安心できる存在になれるように頑張ります!」
西園寺さんがそれほどまでに私に心を許してくれていることが嬉しい。
いつも、年齢の差と学生と社会人という立場の差に、歯がゆい気持ちを持っている。
でも、西園寺さんが”ただの恋人だとは思っていない”と言ってくれたことが、誇らしくもなった。
「……ったく、人の気も知らないで、そんな笑顔をしやがって」
「え……?」
「もう、いいよ。いつかきちんと伝えるから。とにかく、精一杯頑張れ。あずさのコンチェルト、楽しみにしてる」
独り言なのか曖昧に呟きながら、私を抱き寄せた。
「あずさと出会ってから、楽しみにすることが増えた」
「私の方が、絶対たくさんの幸せをもらっています」
夢のような幸せな時間が、夢みたいに降り注いで。甘くてふわふわとした愛に包まれていた。ただ目の前にある未来に、心を躍らせていた。
キラキラとした毎日が続いて行く――。
そう思えていた。
でも――。
私の運命はここで終わるわけではない。人生は死ぬまで続いていく。生きている以上、止まっていはいられない。
それが、どれだけ幸せな時間でも――。