囚われのシンデレラ【完結】

「そうならないためには、早急に損失を補填しなければならない。銀行から融資を受けると言っても、このご時世、そんなに簡単には融資はしてくれない。社に問題がない時は、いくらでもどうぞと寄って来るくせに、一たび問題があると冷たい顔で引いて行く。それが銀行というところだ」
「だったら、どうするんですか?」

斎藤さんに詰め寄るように見上げる。
斎藤さんが目を伏せ、小さく深呼吸をするように息を吐くと、再び目を開き私を見た。

「この状況のセンチュリーを支援したいと言ってきている企業がある」
「それなら――」
「その条件が、業務提携であり、」

斎藤さんの視線に鋭さが滲んだ。

「佳孝との縁談だ」

その言葉を聞いた瞬間に、まるで理解することを拒否するみたいに心が固まる。

「業務提携に縁戚まで結べば、これほど強固な関係はない。それに……その企業のトップに一人娘がいて、ずっと前から佳孝のことを密かに想っていたらしいんだ」

確かに耳に入って来るのに、斎藤さんの声が遠く感じる。

「相手方が強くこの縁談を望んでいる。そしてセンチュリーとしては、資金援助がどうしてもほしい。互いの利害が一致している」

雨粒が激しく歩道を叩きつけて。私の靴に染みを作っていた。

「社長、つまり佳孝の父親は、一刻も早く業務提携をしたい。なのに、その話を未だ進められていないのは佳孝が頑として頭を縦に振らないからだ。それは、君がいるから。あずさちゃんのことが好きだからだ」

硬く目を瞑る。もうこれ以上聞きたくなくて、ただ頭を振る。
それでも、斎藤さんはやめてはくれなかった。

「佳孝に対する社長からの圧力は強まっている。社長には社長の、社を守る責任があるから仕方がない。今、この瞬間も佳孝は追い詰められている。佳孝は必死に他の方法はないかを考えているのかもしれないが、所詮、大学を卒業したばかりの新入社員だ。この状況を打開できる力があるはずもない。結局、社を守るために、佳孝はこの縁談から逃れる道はない。どうせその道を選ぶのなら、傷が浅いうちがいいんだ。だから――」

もう、心が千々に乱れて、感情のままに耳を塞ぎたくなる。そんな私の肩を、斎藤さんが強く掴んだ。

「あずさちゃん、お願いだ。君の方から離れてくれ。佳孝から、離れてやってくれ――」

私の心までも突き刺すみたいに、斎藤さんが私を真っ直ぐに私を見た。
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