囚われのシンデレラ【完結】

 その後どうやって家までたどり着いたのか記憶がない。

「あずさ……どうしたの?」
「ごめん、ちょうど雨に降られちゃって。濡れたからすぐお風呂に入る」

誰とも話したくない。もう、取り繕う気力も残っていない。母の視線から逃げるようにお風呂場に駆け込んだ。扉を閉めて、その場で滑り落ちるように座り込む。

もう、西園寺さんに会うこともできない――。

そのことを全然実感できないのに、どうしようもないほどの喪失感で身体の震えが止まらない。

 西園寺さんが、他の誰かのものになる。あの腕で抱きしめるのは、もう私じゃない。胸の真ん中が痛くて苦しい。

この痛みと苦しみが、西園寺さんを少しでも楽にしてあげることになるなら、受け入れる――。

そう思うのに。私の心は身勝手で。どれだけ、西園寺さんや他の人を苦しめることになっても、今すぐ飛んで行って、もう一度だけでいいから、あの温かくて広い胸の中で抱きしめてもらいたいと思ってしまう。

 でも、最後になったあの夜の、西園寺さんの苦悩に満ちて疲れ切った顔が浮かぶのだ。

 果てしなく長い夜に、押し潰されて。いっそ、心も身体もバラバラになってくれたらとさえ思った。それでも、朝はやって来る。

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