甘くてこまる
「せーらがあんまり楽しそうに撮るから、俺も撮りたくなった」
なるほど、と肩から提げるストラップごとカメラを郁に手渡して、簡単な操作を伝授する。
すると、郁はレンズをわたしに向けるなり、シャッターを切った。
「待……っ、なんで撮るのっ!?」
「なんでって、撮りたいから」
「……っ、な」
カシャリ、カシャリとシャッター音が響く度、わたしが映る写真が増えているだろうことが、恥ずかしくてたまらなくて。
顔を覆い隠すと、ようやく、郁はシャッターを切る手を止めてくれた。
「わたしなんか撮っても、楽しくないよ?」
「何言ってんの、これ以上ないくらい楽しいよ。ほら見て、めちゃくちゃ可愛い」
「お世辞はいいよぉ……」
同じSDカードに記録されるのが畏れ多い。
郁が撮った写真を見せてくれようとするけれど、見ていられなくてふいと視線をそらした。
「お世辞じゃない」
「……うそばっかり!」
「嘘なわけあるかよ。だってこんなに……」
撮ったばかりの写真を、モニター越しに郁が指で撫でる。
ぽつりと呟いた郁の小さな声は、わたしの耳に届くギリギリ手前でしゅわしゅわ溶けた。
「天使みたいなんだから」