甘くてこまる

𓐍
𓏸


隣の家に同い年の女の子がいるらしい。


母さんにそのことを教えられたのは、いつだっただろう。

俺が3歳になった年、父さんと母さんが夢のマイホームを建てて、その家に越して来る前だったっけ? それとも住み始めてしばらく経ったあと? ――まあ、細かいことはいいや。



とにかく、俺は興味がなかった。

ひとりで黙々と遊んでいる方が性に合っていて、近所に同い年の子が住んでいても、会ってみたいとか、友達になってみたいとか、少しも思わなかったんだ。そんな俺を、母さんは心配していたらしいけど。



だから、俺がせーらのことをはっきり認識したのは、保育園に入ってから。


たまたま同じ “さくら組” になって、この子が母さんがよく言う「おとなりのささもとせいらちゃん」なのだと、ようやく顔と名前が一致した。



ただ、そこからすぐに仲良く話すようになったわけではない。

同じ部屋で過ごしていても、友達とままごとで遊ぶのが好きだったせーらとすみっこで黙々とブロックを積み上げているのが好きだった俺には、接点なんてほとんどなかった。



きっかけは、秋。

保育園の生活発表会で、俺たち “さくら組” は劇を披露することになった。


演目は――――なんだったかな、もうタイトルまでは覚えていないけれど、グリム童話だか、アンデルセン童話の、有名なおとぎ話で。


そこで、俺は「せりふを覚えるのが早かったから」という、ただそれだけの理由で、主役の王子役に抜擢された。



< 107 / 109 >

この作品をシェア

pagetop