甘くてこまる

俺は別に、どんな役でもよかったのだけれど――――目立つ役というのは、それなりに羨ましいものなのだろう。

俺が普段、すみっこにいるような物静かな性格だったということも相まって、やんちゃな男子たちからやっかまれるようになった。



――――そして、本番の1ヶ月ほど前、サイズを合わせるために、衣装を試着した日のことだ。




「あー!おまえ、男のくせにキラキラした服着て、はずかしいんだー!」

「わはは!女みたいなフリフリの服で、へんなのー!」




王子の衣装に着替えたら散々からかわれて「俺だって好きでこんな格好してるわけじゃないのに」といじけていたら、その隙に、唯一気に入っていた小道具の剣を無理やり奪われる。



「あ……」




ダンボールにアルミホイルを貼りつけた、先生の手製のものだけれど、キラキラ輝く剣は魅力的で、気に入っていた。


だから、強引に奪われて悲しかったのに、咄嗟には何も言い返せず、ぐっと唇を噛みしめた。

悔しさを耐え忍ぶことしかできない弱虫な自分が、どうしようもなくみじめに思えて、鼻がツンとする。



ここで泣いたらもっとみじめになるのに――――と思った瞬間、目の前に、天使が舞い降りたんだ。



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