甘くてこまる
「だめでしょー!」
視界いっぱいに広がる、白いふわふわは、天使役を与えられたせーらの衣装の背中に縫いつけられた柔らかな羽。
俺の前に立ちはだかったせーらは、剣で遊ぶ男子たちに頬をふくらませる。
「いくら王子さまがうらやましいからって、イジワルしちゃだめ!」
「わ、わかったよ……」
せーらの剣幕に圧倒された男子たちは、剣から慌てて手を離す。それを拾い上げたせーらは、俺を振り返った。
「はい、どうぞ」
「……あ、ありがとう……」
「どういたしまして! あのね、いくくんの王子さま、かっこいいよ。せりふ、いっぱいあるのに、1回もまちがえてなくてすごいねっ!」
真っ白なワンピースに、天使の羽を背負って、にこっと無邪気に笑ったせーらは眩しくて清らかでかわいくて……なんていうか、本当に天使みたいだった。
この子と仲良くなりたい――――生まれてはじめての衝動が体を突き抜けた。
けれど、せーらは用事が済むとあっさり背を向けて、ぱたぱたと駆けて俺の前から去っていく。
「ひろくん!」
同じく “さくら組” 、もう1人の王子役、千坂紘の元へ。
そう、俺は、もともと仲良しのせーらと紘の間に割り込む形で2人と距離を縮めていったんだ――――この日を境に。


