死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
「俺には願ってもない話だ。──だけど、いいの? 俺で」
自分でいいのか──正妃ですらなかった女から生まれた、第二王子のヴァレリアンでいいのかとリアンは問いかける。
「俺はあいつの弟だよ。生きている限り。…王国と縁を結ぶことになるのに、いいの?」
この結婚は帝国と王国を結ぶことを意味する。さすればフェルナンドはクローディアの義兄となり、否応なしに顔を合わせなければならない機会が多々あるのはクローディアも承知の上だ。
「……あの人と一生関わりたくないのなら、リアンでなく他の人を選ぶべきなのかもしれない。でも、私は怖いの」
「怖いって、なにが」
「信じた人に、裏切られるのが怖い。だから、裏切られてもいいって思えた人の手を取りたいの」
時を遡る前のクローディアは、物事を知らなさすぎたゆえに簡単に人を信じてしまい、悲しい結末を迎えてしまった。
だが、今の自分は──第二の人生を歩き出した今のクローディアは、自分の目で見たものを信じ、選んでいる。
リアンにならば、たとえ裏切られてもいい気がしたのだ。もしもそうなってしまったら、クローディアに人を見る目がなかっただけのこと。
(…それに、リアンは)
リアンは、人を騙したりする人間ではないだろう。傷つき、苦しみ、辛い目に遭ってきた人が、他人を自分と同じ目に遭わせるはずがない。