死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
それから数日目の朝、朝食後の散歩から宮に戻ったクローディアは、今まさに外へ出掛けようとしているリアンと玄関ホールでばったりと会った。 

朝食の時、リアンは今日の予定は特にないと言っていた。だからいつものように、リアンはクローディアを連れてどこかの孤児院へ行くか、どこにも行かずに家でのんびり過ごすと思っていたのだが。

「今日はどちらへ?」

リアンはお忍びで行くのか、市井を歩いても民に紛れ込める格好をしていた。

ここ最近はすっかり着なくなっていた、顔まですっぽりと隠せる暗い色のフード付きのローブに、その下には布切れを縫い合わせたような服を纏っている。もう季節は冬だというのに、随分と薄着だ。

「グロスター侯爵領へ。あの教会の子供たちがどうしているか気になって」

行き先を聞いて、クローディアは納得した。これからリアンが行くのは、以前二人で訪れた美術館がある領地だ。帝都の隣にあり、馬車だとそう時間は掛からない。

「毎日働き詰めだと聞いたわ。たまには休んで」

行ってきますもなしに歩き出したリアンを、クローディアは慌てて追いかけながら声をかけた。すると、そう言われたのが意外だったのか、リアンはぴたりと足を止めてクローディアを振り返る。

「…分かってると思うけど、五日に一度は部屋で寝転んで過ごしてるよ。…心配なの?」

「当たり前でしょう。夫の心配くらいするわ」

リアンはどう答えて良いかわからなかったのか、クローディアから顔を隠すように俯く。恥ずかしかったのか、また別の理由からなのかは分からないが、その頬はほんのりと赤く染まっていた。

使用人の一人が馬車の用意ができたとリアンを呼びに来た時、リアンは唇を引き結んで顔を上げると、クローディアに微笑みかけた。

「……早く帰るようにするよ。なるべく」

クローディアも笑った。花開くようなその笑顔を見て、安心にも似た感情を抱いたリアンは、扉の向こうへ歩き出した。
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