死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
それからしばらくの間、リアンが子供たちと遊んでいると、建物の中からシスターが血相を変えた様子で飛び出してきた。誰かが呼びに行ったのか、リアンの来訪に気づいたからなのかは分からないが。
シスターはリアンの目の前まで来ると、今にも泣き出しそうな顔でその場で深々と頭を下げた。
「…こんな、こんな何もない場所まで足を運んでくださり、ありがとうございます。貴方様のような御身の方が…何とお礼を申したら良いか…」
シスターは何度も頭を下げ続けた。何一つ悪いことなどしていないというのに、そんな様子でいるシスターを見たら、子供達が不思議がってしまうだろう。
どうして首を垂れるのか、リアンは誰なんだ、と。
「顔を上げてください、シスター」
リアンはシスターの肩にそっと手を触れた。恐る恐る顔を上げたシスターを見て、リアンは柔らかに微笑みかける。
「俺が来たくて来たんです。それに、約束もしたので」
そう言って、リアンはぐるりと周りを見渡す。ようやく修繕工事が開始された古びた教会に住んでいる彼らは、豊かな侯爵領の民だというのに、難民のような生活を送っていたようだった。
リアンは一番小さな子供を抱き上げると、箱いっぱいに持ってきた日持ちのする果物をひとつ手に持たせた。その子は生まれて初めてこれを目にしたのか、リアンの腕の中で瞳を輝かせている。
「遅くなって、ごめんね」
子供たちは「なにが?」と不思議がる。
リアンは何でもないよと笑いかけると、空いている方の手であの日に会った少女と手を繋ぐと、痩せた畑へ向かって歩き出した。