死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
「ディアよ。この頃、エレノスの様子がいつもと違うと思わないか?」
突拍子もない話に、クローディアは驚きつつも首を傾げた。
最後に会ったのは晩餐会の時だが、いつもと変わらず優しく、気遣ってくれたように思う。だが、ほぼ毎日政務で顔を合わせているルヴェルグはそうは思わないらしく、大きな窓の前へ移動すると立ち止まった。
「私の知るエレノスは自分から何かを求めて動くような人ではなくてな。いつ何時も私に意見を求めてから動くのだが、この頃のエレノスはどうにもよく分からないのだ」
ここ最近のエレノスは、何も言わずに何かをしているようだと言う。皇帝への報告が必要なことをしているわけでもなければ、それを義務付けているわけでもないことから、どこで何をしていようが構わないが、エレノスがそういう風にしたことは今まで一度もなかったそうだ。
「いつどこで何をしようと、それはエレノスの自由だ。国に関わることでなければ、報告も要らぬ。だがな、そうではないのだ…」
「……ルヴェルグ兄様?」
ルヴェルグは何度か口を開き、閉じてから、小さな声で何かを呟いていたが、その声はクローディアには届かなかった。そして、ふわりとマントを翻すと、寂しそうな微笑を飾って。
「ディアなら何か気づいているのではないかと思ったのだが、どうやら私の気にしすぎのようだな」
「兄様──」
「──失礼致します、陛下。オルシェ公より早馬が…」
「すぐに戻る」
クローディアはルヴェルグを呼び止めようとしたが、扉越しに聞こえた兄の配下の声を聞いて口を噤んだ。
そんなクローディアを見て、ルヴェルグは困ったように眉尻を下げていたが、子供の頃からしていたようにクローディアの頭をそっと撫でると、早足で部屋を出て行った。