死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる

部屋にひとり残されたクローディアは、甘酸っぱい紅茶を喉に流し込んだ。砂糖を入れずとも、クローディア好みの甘さであるこの紅茶は、エレノスが自らブレンドしたものだ。

──『おにいさま、紅茶って、甘くないのね』

クローディアが幼かった頃。まだ紅茶の美味しさが分からなかったクローディアは、初めてそれを飲んだ時、舌を出して顔を顰めていた。

そんなクローディアを見たエレノスは柔らかに微笑みながら、これならどうかと干した果実やハーブなどを入れて、クローディアが飲めるよう味を調節してくれたのだ。

ローレンスが花を好きなように、紅茶を好んでいたエレノスは、自分で栽培した茶葉をブレンドし、こうして時折届けてくれていた。

そんな優しい兄が、家族に何も言わずに何かをしていた。そして、他国の慶事の色である服を着て、何日も滞在するという。

(きっと、フェルナンドがお兄様に何か言ったんだわ)

そうでなければ、エレノスがクローディアに何も言わずに留守にするなんてあり得ないだろう。だって、ふたりは誰よりも濃い血で繋がっている兄妹なのだから。

クローディアは齧りかけのクッキーの残りを口に運び、ナフキンで口元を拭うと立ち上がった。やらなければならないことが見つかったのだ。

「──失礼致します、皇女様。どうなさいましたか?」

クローディアからの呼び鈴の音で、別室で待機していたアンナがやって来た。

「アンナ、馬車を用意してくれる? 雨が弱まったから、出かけてくるわ」

「かしこまりました」

アンナが駆け足で部屋を出て行ったのを見て、クローディアは衣装部屋から頭から足元まですっぽり隠れる雨具を引っ張り出すと、玄関へと向かって急いだ。
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