死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
(──リアン、今日は一日同じ所にいるかしら)
クローディアはリアンと話さなければと思っていた。
生まれた時からずっと一緒にいた家族でも、話さなければ何を考えているのかわからなくなってしまうのだ。赤の他人であるリアンなら尚更、兄たち以上に話し合わなければならない相手だろう。
──『……嫌なこと、聞いてごめん。ディアのことが、知りたくて』
──あの日。リアンがアルメリアは人の名前ではないかと訊ねてきた日、クローディアは聞かないで欲しいと言ったのに、踏み込まれたことが悲しくて辛かった。
それは、リアンは駄目だと言ったら、それ以上は何もしてこない人だと思っていたからだ。事実、それまでも踏み込んできたことはなかった。
きっと、あの時のリアンとルヴェルグは同じなのだろうと思う。エレノスのことが分からないと言って、悲しそうな顔をしていたルヴェルグは、とても寂しそうだった。どんな時でも、どんなことでも話してくれていたエレノスが、この頃何も言わなくなってしまったから。
リアンも同様に、一番近くにいるはずの存在──仮初だとしても、形だけのものだとしても、一緒にいようと約束をした人が、何も話してくれなかったら、寂しい気持ちになってしまうだろう。
だから今度はクローディアの番だ。いつだって味方で、守ろうとしてくれたリアンのために、クローディアから歩み寄りたい。
逃げてばかりじゃなくて、向き合わなければ。そのための第一歩を踏み出さなければ。
「──ここで降りるわ」
リアンの行き先の孤児院の門の傍で、見慣れた馬車を見つけたクローディアは、馬車から降りるとドレスの裾を持って駆け出した。
もう、雨は降っていなかった。