死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる


空にかかっていた灰色の雲の隙間から、白い日が射しはじめている。あんなにも降っていた雨はいつの間にか降り止み、その予期せぬ天候にローレンスは目を細めながら空を見上げていた。

つい先日咲いたばかりの花は大丈夫だろうか。ただでさえ寒い日が続いているというのに、そんな中で花を開かせたと思えば、大雨に見舞われるだなんて。

「雨、止みましたね」

宿屋を出たローレンスとマリスは、馬を引き取りに行ったハインを入り口で待っていた。

マリスの服はずぶ濡れだったので、代わりに手配した衣服を着てもらっている。セーラーのような襟と膝まであるロング丈が特徴の、通称帝国式と呼ばれている型のコートだ。以前リアンにも着せたそれは、マリスにもよく似合っていた。

「遥々帝国にやって来たマリス君の時間を無駄にしないようにと、天が雨雲を追い払ってくれたのだろう」

「ふふ、なんですかそれは」

マリスは笑う。まだ熱が引いていないのか、寒さの所為なのかは分からないが、その頬はほんのりと赤かった。熱を計ろうとローレンスは手を伸ばし、マリスの額に触れる。すると、マリスは子供のように頬を膨らませ、不満そうな顔をした。

「…そうやって、僕を子供扱いするんですから」

「うん? 僕からしたら、君は子供なのだがね」

遠回しに嫌だと言っているようなのに、ちっとも嫌そうには見えないマリスが面白くて、ローレンスは声をあげて笑った。

ひょっとしたら、マリスにはローレンスのような歳の頃の兄が居るのかもしれない。家出をしてきたと言っていたが、どんな理由があって出てきたのだろうか。
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