死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる

触れてはいけない気がしたローレンスは、可愛い弟のように思えて仕方がないマリスに笑いかけると、今度は頭を撫でた。

そんな戯れ合う二人の元へ、ハインが二頭の馬の手綱を引いて駆けてきた。

「──殿下、お待たせしました!」

ローレンスは軽やかに馬に跨ると、マリスに手を差し出した。てっきりハインの後ろに乗ると思っていたマリスは、ぽかんと口を開けてローレンスを見上げる。

「さあ、僕の後ろに乗りたまえ」

「僕のような人間が、良いのですか?」

「嫌かい? 僕の愛馬のリリーは」

ローレンスに仕えて十年になるハインは、初めて愛馬の名を聞いて吹き出した。おまけにその馬は雄なのに、女性の名を付けていたとは。

マリスは嬉しそうな顔をすると、ローレンスの愛馬・リリーの鼻を撫で、何かを囁く。そして慣れた動作で馬の背に跨ると、ローレンスの腰に手を回した。

「では行こうか。帝都へ」

ローレンスは足首を柔らかく上下に動かし、リリーのお腹に合図を送る。するとリリーは軽やかに駆け出した。

ローレンス一行は帝都へと繋がる大きな街道からは外れ、木々が生い茂る小道を進んでいた。この道では馬が好む草が道に沿うように自生していて、近くに大きな川もある為、遠乗りが好きな者はよくここを通るのだ。
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