死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
小道の出口に差し掛かった頃、途中の分かれ道の先で、皇族の紋章がある馬車を見つけたローレンスは「おや」と声を上げた。
「あれは殿下の馬車だな」
ローレンスが見つけた馬車は、孤児院の門のそばに停められていた。正面には国の象徴の花である沈黙の薔薇が、傍には皇女の夫君であるリアンの花紋として、ルヴェルグが決めたサザンカの花が彫られていた。つまりあれはリアンの馬車だ。
「殿下? 兄上様ですか?」
「いや、ヴァレリアン殿下だよ。妹の…クローディアの夫君でね」
「皇女殿下は、ご結婚されていたのですかっ?」
マリスは驚いたように声を上げ、ローレンスを掴まる手に力が籠った。それを不思議に思ったローレンスは、前を見据えたまま口を開く。
「うむ、昨年の秋のことだ。…オーグリッドからは祝いの品を沢山頂いたのだが、ご存じなかったのかね」
他国の貴族といえど、帝国と友好同盟を結んでいる国の人間が、皇女が結婚したことを知らないなんてあるだろうか。ローレンスの顔と名を憶えていてくれたのなら尚更、クローディアがヴァレリアン王子と結婚したことを知らないとは。
「……あ…その、僕は反抗期だったもので」
焦ったような声音と不思議な返答に、ローレンスは眉を寄せた。マリスとはまだ出逢って一日も経っていないが、その心根は優しく、真っ直ぐな人であると思っていたからだ。