死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる


雨上がりの空の下で、きらきらとした表情で駆け回っている子供たちを眺めていたリアンは、ゆっくりと近づいてくる人影に気づいて顔を向けた。

そこには凛とした目でリアンを見つめる、白銀色の髪の美しい少年が立っていた。

リアンは瞬時に子供たちを背に庇うようにして立つと、ごくりと唾を呑んだ。

「……どなたですか?」

一瞬、少年をベルンハルトかと思ったが、瞳が菫色で彼よりも背が低いので別人だと分かった。

ならば、誰だろうか。突然目の前に現れたこの少年は。
必死に頭を働かせるリアンの前で、少年は一瞬だけ嬉しそうに笑うと、深く頭を下げた。

「──ご無礼をお許しください。貴方が皇女殿下の夫君、ヴァレリアン殿下ですね?」

「…そう、ですが。貴方は?」

少年はゆっくりと顔を上げる。その瞳は潤んでいて、今にも涙を落としそうだった。

「……貴方を選ばれたのですね。よかった」

一体何のことなのか、そもそも何に喜んでいるのか理解が追いつかなかったリアンは、何を言えばいいのか分からず固まっていた。だが、少年の瞳から大粒の滴が落ちたのを見て、リアンは何か言わなければと思った。

(──でも、何を?この人は誰…?)

呆然と立ち尽くすリアンだったが、目の前にいる少年を見ているうちにあることに気がついて、唇を開いた。

だけど、リアンの声よりも先に、空気を駆け巡ったのは少年の囁きのような声で。

──皇女殿下のこと、よろしくお願いいたします。

その涙に濡れた声を聞いた瞬間、ある確信を得たリアンは、反射的に少年の手を掴んでいた。
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