死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
「それはできません。永遠に。……ごめんなさい、殿下」
「お願いです! どうかっ…」
少年に背を向けられたリアンは、もう一度引き留めて、今度こそ縄にでも繋いでクローディアの元に連れて行こうと考えた。
けれどリアンの手は宙を描いて、少年に触れることは叶わず、その背は遠のいて行く。
だが、その先でここに来るはずのなかった馬車が停まり、中からクローディアが出てきた。
リアンは開口一番に叫んだ。
「──ディア! 今すぐあの人を追って!」
リアンの声に、フードを被った少年は駆け出していった。見事に横をすれ違ったクローディアは、目をぱちぱちとさせながらリアンと後方を交互に見る。
「あの人? どういうことなの?」
「理由はいいから、早く! でないと、今度こそもう二度と逢えなくなるかもしれないからっ…」
今ならまだ間に合うから、行ってほしい。その背を追いかけてほしい。あの人は生きていたんだよ、逢えるんだよ。そう言いたいのに、何も言えなくなってしまったリアンは、突然現れたクローディアの前で立ち尽くしていた。
リアンはクローディアの幸せを願っていた。クローディアにとっての幸せが何なのかは分からないけれど、逢えないと思っていた人に逢えるのなら、それは自分と共にいる時間よりも遥かに幸福なものだろうと思う。
なのに、何も言えなくなってしまって。
それどころか、胸の辺りが詰まったような気がして、苦しくなって。
息をするのは、こんなに難しいことだっただろうか。
「……そんな顔をしているリアンを置いて、どこへ行けと言うの?」
リアンの手に、優しい熱が灯る。
いつかの日のお返しをするかのように、リアンの手を握ったクローディアは、とても綺麗に笑った。
「……ねえ、リアン。私は今、あなたと話がしたいわ」
「…ディア……」
クローディアの声を聞いて、リアンは初めて自分が泣いていることに気づいた。