死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
「三国とオルヴィシアラが手を組み、帝国へ向け進軍しているということだろうか」
「見たままを言うならば、ですね。……でも、早すぎる」
自分が今言わんとしていたことを先に言われ、驚いたローレンスは斜め後ろを振り返った。ローレンスの視線に気づいたマリスは薄い唇を横に引き、ニッと勝気な表情をしている。
「勉強をサボっていた僕でも、世界情勢くらい知っていますよ」
「さすがは名門貴族の令息だ」
ローレンスはマリスの頭をわしゃわしゃと撫で、再び前を向いた。
平和主義を掲げ、武器を捨てたはずの王国が、武装して自国の旗を掲げている。その道の先は帝国だ。
この光景を目の当たりにして、帝国が他国に侵されようとしているという以外の答えは浮かばなかった。
「困りましたね。ここから帝国に入るにはオルシェ公爵領を抜けるか、ロベト山を通るか、時間がかかる海路しかありません」
「うーむ、どうしたものか」
マリスは木の棒を手に、ざっくりとした地図らしきものを描いては難しい顔をしている。
(マリス君は我が国の貴族の少年たちよりも賢そうだな)
世界情勢だけでなく他国の地理も勉強していることにローレンスは深く感心していた。