死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
◇
冷たい風が頬を撫でつける。引き摺られるようにして皇宮から連れ出されたクローディアは、フェルナンドの腕の上で寒さで身体を震わせた。
それに気づいたのか、フェルナンドは脚を止めて膝を折ると、着ていた上衣をクローディアに掛けてまた抱えて歩き出した。
自分をころした男の匂いと温もりに込み上がってくるものがあったが、人質となっている今、フェルナンドを刺激するわけにはいかない。
フェルナンドが何を考え、どこへ行こうとしているのかは分からないが、クローディアは黙って目を閉じた。
「着いたぞ、クローディア」
目的地に着いたのか、フェルナンドは歩みを止める。抱えていたクローディアをゆっくりと地面の上に下ろすと、その足首を縛っていたロープをナイフで切った。
自由になったクローディアは目を開け、辺りを見回した。どうやらここはクローディアの住まいである南宮のようだ。
「何故ここに…?」
フェルナンドはナイフを手にしたまま花壇を見つめていた。その先で咲き乱れているのは、色とりどりのアルメリアの花だ。
クローディアの住まいであるこの場所を、フェルナンドは知っていたのだろうか。この花が咲いていることも知っていて、クローディアを連れて来たのだろうか。
疑問には思っても、知りたいとは思えなかったクローディアが一歩、脚を動かした時。
「暫しの間、花を愛でないか」
フェルナンドは花からクローディアへと目を移すと、静かな微笑を浮かべながらそう言った。それはかつて夫だった男の、初めて見る表情だった。
冷たい風が頬を撫でつける。引き摺られるようにして皇宮から連れ出されたクローディアは、フェルナンドの腕の上で寒さで身体を震わせた。
それに気づいたのか、フェルナンドは脚を止めて膝を折ると、着ていた上衣をクローディアに掛けてまた抱えて歩き出した。
自分をころした男の匂いと温もりに込み上がってくるものがあったが、人質となっている今、フェルナンドを刺激するわけにはいかない。
フェルナンドが何を考え、どこへ行こうとしているのかは分からないが、クローディアは黙って目を閉じた。
「着いたぞ、クローディア」
目的地に着いたのか、フェルナンドは歩みを止める。抱えていたクローディアをゆっくりと地面の上に下ろすと、その足首を縛っていたロープをナイフで切った。
自由になったクローディアは目を開け、辺りを見回した。どうやらここはクローディアの住まいである南宮のようだ。
「何故ここに…?」
フェルナンドはナイフを手にしたまま花壇を見つめていた。その先で咲き乱れているのは、色とりどりのアルメリアの花だ。
クローディアの住まいであるこの場所を、フェルナンドは知っていたのだろうか。この花が咲いていることも知っていて、クローディアを連れて来たのだろうか。
疑問には思っても、知りたいとは思えなかったクローディアが一歩、脚を動かした時。
「暫しの間、花を愛でないか」
フェルナンドは花からクローディアへと目を移すと、静かな微笑を浮かべながらそう言った。それはかつて夫だった男の、初めて見る表情だった。