死に戻り皇女は禁色の王子と夢をみる
「どうして貴方は、私を殺したの?」
「───ッ!」
クローディアの問いかけに、フェルナンドは愕然と目を見開いていた。だが直ぐに我に返ったように、地面から剥がれるようにして立ち上がると、クローディアの細い肩を両手で勢いよく掴んだ。
「私は殺してなどいないっ!!」
「貴方が手配したという薬を飲むようになってから、私の身体は言う事を効かなくなったわ。貴方がそう仕向けたのではないの? 」
元より病弱だったクローディアは、それが原因となり産後の肥立が悪かった。だが日を追うごとに自分の身体は自分でさえもどうにもならないほどになっていったのだ。起き上がることも、水を飲むことも、ついには瞼を開けることさえも。
「確かに私は宮廷医に薬を手配させたが、お前を殺めるためのものではない! 寧ろ私はっ…」
寧ろ自分は何だと言うのか。何を為そうとしていたのか。
目を醒ましたこの世界で再び会った日、フェルナンドは“帝国の力をもって、大陸を支配下に置く”のが夢だったのだと語っていたのに。
偽りばかりを口にし、伴侶にと望んだ女の命を散らせた男のことを、クローディアはもう信じない。
そんな気持ちで見つめていたから、伝わったのだろうか。
「………もう、いい」
何が、と聞き返す暇はなかった。
フェルナンドは気力を失ったような顔でクローディアを見据えていたが、何を思ったのか、腰に穿いていた剣を抜いてクローディアの首筋にそっと刃を当てた。